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ミスドで女2人が殴り合ってる場面に出くわしたことがある。



それはもう何年も前、とある商業施設の中にあるミスドに寄ったときのこと。

私は大好きなココナッツチョコレートとダブルチョコレート、オールドファッションにエンゼルクリームなんかを買おうとルンルン気分でミスドに入った。

そしたら女2人が殴り合っていたのだ。


「なんっっだよっっ…!!なあっ……!おいっ……!」
「なに…!?はぁ…!?くっ…!」



露出の多い派手な若い女と、地味で小柄な普通のおばさんだった。

以下派手ネキ地味おばとする。


2人は何やら小声でお互いを罵り合いながら、派手ネキが地味おばの髪を掴み、地味おばは俯きながらも弱腹パンで応戦していた。
その姿はボクシングのクリンチのようで、なんだか苛烈な争い!というよりはゆったりとしていて、それでいて近寄れない謎の気迫を感じさせた。


周りを見回すと、客も店員もみんな我関せずと静観を決め込むばかりで、誰1人としてその2人を止めようとはしていなかった。
店内は静まり返り、2人の取っ組み合う音だけが在った。ミスドなのに。甘くて美味しいドーナツを買う店なのに。異常。あまりにも異常な空間だ。この空間ならユニコーンも処女相手に失せろと言うだろう。


私はというと、正常性バイアスが働いたのかそのまま自然にトングとトレーを取り、揉み合う2人とすれ違うようになぜかドーナツ棚へと進んだ。こんな異常空間でドーナツを買うな。



次の瞬間。



ガッシャーーーン!!



揉み合った2人はそのまま入り口付近に置かれていたポイントを貯めたら交換してもらえる皿のサンプル台にぶち当たった。サンプル台が倒れ、可愛い皿が粉々に割れる音が店内に響く。そして2人は何事もなかったかのようになおも揉み合い続けている。



おおごとじゃん・・・。


ダブルチョコレートをトレーに取りながら、さすがの私も我に返った。

しかし当時私はまだ未成年。割って入るのは絶対に怖くて無理。
改めて店内を見るも、やはり誰もその2人を止めようとはしていなかった。
しかしその様子を笑いながらスマホで動画撮影するような奴もいなかった。

『モラルがあるのかないのかわかんねー空間だな…』と私はぼんやり思った。


しかし確かに私にも『イカれた奴とは関わりたくないが、暴力は止めなければ』という相反するこころがふたつある。
やがて制服を着た痩せたおじさんが駆けつけたが、警察ではなく警備員だったし、2人の気迫に押されて手出しできずにいて、結局この空間は保たれたままだった。


そしてここにきて意外な事実が判明した。


「なあ…!もういっぺん…!言ってみろって…!!*÷¥#%…って…!なあ…!言っただろてめー…!」
「…ばかじゃないの…!もう…!はなせ…!くそ…」


なんと地味おばが火種だったようなのだ。

思えばみんなが手出しをしていない理由はココにあったのかもしれない。怖い上に庇いづらかったのだろう。

しかしその真偽の程はわからないし、どちらが発端だろうとミスドで殴り合っていいわけはない。



『よし!通報しよう!』



私は決意した。通報…人生で一度はしてみたいことランキングでもだいぶ上位の行為だ。ちなみに私は夢でよく通報しようとするけど、夢特有の謎の不都合が重なり一度も繋がった試しがない。さあ現実世界で今こそ繋げてみせようじゃないか!


私はスチャリとスマホ(携帯だったかも)を取り出しレジの若い女店員さんに小声で話しかけた。


「通報しましょうか…!?(迫真)」

「もうしてます〜💦」




してた。

ぁよかった…」私は心にもないことを言ってスマホをバッグにしまった。
なるほど。ここにいる人たちはみんな警察の到着待ちだったんだな。というかここで店員さんが通報すらもしてなかったら今このミスドにはモラルどころか秩序すらないということになってしまうので、むしろよかった。ミスドに秩序、あります!



しかしそうなってくるともはやここに用はない。私はそのまま警察が到着するよりも先にダブルチョコレートとオールドファッションのお会計を済ませ、さっさと家に帰った。

ミスドうま〜い!最高!


おわり。


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オマケ

ふわふわ一本足オバケ。
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