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殺人的にくさいおならが止まらない日があった。

原因はわかってる。暴飲暴食だ。
でもそれはトンカツやケーキが美味しかったからであって私のせいではないし、対策のしようはない。止めようもないことだ。部屋の窓を開けて空気の入れ替えを繰り返しながら、私はその日何度目か知れないおならを放った。


バフ!



空気清浄機『…バオーーーッ…!!』




空気清浄機が頑張りだした。

その健気さにふふっと笑みが溢れたが、すぐに思い直した。いや…威嚇している…?と。
ファンやモーターの大きな駆動音から威圧的なものを感じるし、オレンジに点滅するランプは「いい加減にしろよ!」とこちらを睨みつけているようだ。

しかもよく見たら『pm2.5』のランプが点灯している。私のおならは公害と認定されてしまったのか…。もう安保理案件じゃないか。誰に見られているわけでもないが、なんだかとても恥ずかしい。

おならを我慢すべきだろうか。

でも子供の頃、医学をかじっている親戚に「おならを我慢するとおならは血液に溶けて体臭がくさくなる。だからおならを我慢してはいけないよ」と教えられたことがある。今一時部屋がくさくなるのと、私自身がくさくなって「あいつなんか臭くね?」と周りに思われるのでは、前者の方が絶対にマシだ。

私はまたおならを放った。


ババフ!



空気清浄機『ンバオオオオオオオーーーーーーーッ!!!!💢💢💢』



めちゃくちゃ怒られた。
真っ赤なライトを点滅させながらフル稼働する空気清浄機。申し訳なく思いながらその働きぶりをぼんやり見ていると、私はふと重大なことを思い出した。



この空気清浄機…結婚祝いで友人たちから贈ってもらったやつじゃん……。



なんてことだ。私はそんな大切な思い出に屁(くさい)を嗅がせまくっていたんだ。
これがかけがえのない友情に対する仕打ちか?ひどすぎる。


情けなさでダウナーな気持ちになった。部屋がくさいから気持ちもくさくさする。でもおならは生理現象だ。アイドルだってするし、生きとし生けるものはみんなする。

そういえば昔『牛のおならに含まれるメタンガスがオゾン層を破壊し、地球温暖化の原因の一つになっている』という話を聞いたことがある。そうだ!聞こえますか?空気清浄機さん、あなたは私を責めますが、牛の方がよっぽどタチの悪い屁を世に送り出しているんですよ!?



空気清浄機『……ゥウウン……(鎮静)』



通じた!!!!
じゃない!!これ壊れかかってる!?!?
一瞬の驚きのあとすぐに冷静に焦り出し、私は空気清浄機の電源を切って再起動した。


すぐにまたバオーーーッ💢と怒り出す空気清浄機。私は胸を撫で下ろした。よかった。死んだかと思った。さっきまで怒られまくって嫌だったのに、なんだか失いかけた友人を奇跡的に取り戻したような、そんな安心感と感動があった。


でもこの文を読まれたら本当の友人の方を失うと思う。



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